私の制作はあくまでもプロセス重視で、制作当初から作品の完成像が頭にある、と言うことはまずありません。制作の過程で、色々なアイデアが頭を駆け巡り、それを一つずつ試していくわけですが、それが上手く行くこともあれば、失敗することも当然あります。いずれにせよ、作品がアイデアに基づいているということは間違いないですが、必ずしも特定のアイデアを実現するための手段としての作品がある、と言うわけではありません。制作のかなり部分が、偶然に支配・左右されており、無意識下で蠢いている何かが結実した時、作品が完成した、と言うことになります。制作時に聴いている音楽、観た映画、読んだ本など、様々な影響がありますが、それとともに、日々の生活からのものも多いです。住んでいる国や土地、出会う人々、その人たちと交わす会話、日々感じること、制作時の精神状態など、多様です。そう言った意味では、作品は私そのものでもある、と言えると思います。

井上剛志
埼玉県出身。上智大学卒業。
英国、スコトッランドのグラスゴー芸術学校にてファイン・アートを専攻。
現在、ニューヨーク在住。